フェミニズムの歴史を概観する:第二波フェミニズムとはなんだったのか

ただ働く権利だけでなく、職場における平等、有名大学への入学の権利、中絶合法化などのトピックが現れた第二波フェミニズム。社会の変化に伴って「男性の持つ特権への批判」「中絶など自己決定権に対する抑圧への批判」に繋がっていくのです。

この連載について

この記事は「生きづらさとジェンダー論を考える」という連載の中に位置づけられる。ジェンダー論とは性に基づく社会的役割規範からの自由を求める思想であり、女性や男性(あるいはそもそもこのような二分法を破壊することも視野に入るだろう)が、その性ゆえに求められるものを浮き彫りにし、その文化的強制力を相対化したいと考えている。

いま、多くの人達が生き辛さを覚えている。僕はその理由の一つはまぎれもなくこのような「べき論」によるものだと考えている。べき論は文化の中に潜り込んでいて僕達を知らない間に縛り付け、抑圧する。そのためにはまずそのような抑圧があること自体を可視化する必要があるだろう。この連載ではあらゆる「ベキ論」をまずは明るみに出していきたい。

連載「生きづらさとジェンダー論を考える」
vol.1フェミニズムの歴史を概観する:第一波フェミニズムとはなんだったのか
vol.2フェミニズムの歴史を概観する:第二波フェミニズムとはなんだったのか
vol.3ジェンダーを巡る:近代家族という発明品と伝統の構築
vol.4ロマンティックラブ・イデオロギーと母性神話:恋愛、結婚、子育てを巡る現代の価値観
vol.5結婚への圧力が消えた社会の未婚化→少子化とジェンダー
vol.6女性の専業主婦願望の難しさ、男性が共働きを求める理由
vol.7「LGBTは気持ち悪い」記事から見える【元】マジョリティが認めたくない現実
vol.8パートタイムと非正規雇用:女性の労働問題からすべての人の労働問題へ
vol.9海外で上映が一部禁止!? 男性の権利についての映画『The Red Pill』、日本上映の立役者にインタビュー
vol.10女性の労働、ガラスの天井と能力主義の嘘
vol.11フェミニストが男性の権利を直視するドキュメンタリー映画「The Red Pill」を見て

 

ジェンダー論とフェミニズム

ジェンダー論について考える上で、その思想的歴史を考える時にフェミニズムを避けて通ることは出来ない。ジェンダー論が性による抑圧からの解放を議論するためのものなら、フェミニズムとはまさに女性という性に対する社会からの抑圧との闘争の歴史だからである。

そこで、この連載ではまずジェンダー論について考える前にフェミニズムの歴史を極めて簡単にではあるが概観することにした。フェミニズムとは大きく分けると第1波、第2波、そして現代は第3波の時代に分かれている。前回につづいて、今回は第2波の流れを見たい。

ちなみに第1波は、階級社会が破壊される中で「市民」が誕生した頃が舞台である。なぜならば、その市民という言葉は中産階級以上の健康な「男性」のみを示していたからだ。人前で演説すれば投獄され処刑される時代の女性の権利を求める戦いがフェミニズムの第1波である。

連載「生きづらさとジェンダー論を考える」
vol.1フェミニズムの歴史を概観する:第一波フェミニズムとはなんだったのか
vol.2フェミニズムの歴史を概観する:第二波フェミニズムとはなんだったのか
vol.3ジェンダーを巡る:近代家族という発明品と伝統の構築
vol.4ロマンティックラブ・イデオロギーと母性神話:恋愛、結婚、子育てを巡る現代の価値観
vol.5結婚への圧力が消えた社会の未婚化→少子化とジェンダー
vol.6女性の専業主婦願望の難しさ、男性が共働きを求める理由
vol.7「LGBTは気持ち悪い」記事から見える【元】マジョリティが認めたくない現実
vol.8パートタイムと非正規雇用:女性の労働問題からすべての人の労働問題へ
vol.9海外で上映が一部禁止!? 男性の権利についての映画『The Red Pill』、日本上映の立役者にインタビュー
vol.10女性の労働、ガラスの天井と能力主義の嘘
vol.11フェミニストが男性の権利を直視するドキュメンタリー映画「The Red Pill」を見て

 

第二波フェミニズム

第一波フェミニズムとの最大の違いは、大きな変動を迎える社会ではなく、一旦型にはまった生活が作られた社会における運動であるところです。市民革命などの大変動の中で女性が新たな立ち位置を模索したのが第一波とすれば、第二波はそこで作られた立ち位置を更に覆すためのものでした。

アメリカのベティー・フリーダンがその思想的先鞭をつけたと言われている。彼女は新聞記者として活動しながら、第2次世界大戦以降のアメリカ社会のにおける女性の鬱屈を見出します。戦争も終わり最も豊かな時代であるアメリカにおいて、どのような問題が起きていたのでしょうか。

郊外の一軒家で愛する夫や子どもがいて、アップルパイを焼いて掃除洗濯をこなす専業主婦家庭。まさに絵に書いたような結婚生活ですが、その女性達の中には「これで(今日も、自分の人生も)おしまい?」という感情に苦しめられていたのです。

仕事はほどほどにして早期に結婚すれば自分のキャリアは終了。幸せであるはずの生活を幸せと感じることが出来ず、自分を責め精神科にかかりアルコールや睡眠薬の依存性に苦しむ女性たちが増えていたのです。

インタビューを通してそれを明らかにしたフリーダンは、それを「新しい女性の創造」という書籍にまとめ、更にこのような苦しみは女性の感じ方の問題ではなく、社会における女性の立ち位置の問題であると断じてNOW(全米女性機構)を設立するに至ります。

ただ単に働く権利だけでなく、職場における平等、男子有名大学などへの入学の権利、中絶合法化など多様なトピックがここに現れてきました。社会の変化に伴って「男性の持つ特権への批判」「中絶など自己決定権に対する抑圧への批判」に繋がっていくのです。

第二波の続き

先程書き出したようなトピックは、現代にも続く息の長いものです。職場における給与格差は欧米では随分改善されましたし議員の数も増えましたが、日本ではいまだ明確に違いがあります。中絶は日本の場合あまりタブー視されていませんが、未だにヨーロッパ諸国では政治家が当選するかどうかというレベルの極めて大きなトピックとなっています。

論者の中には「フェミニズムとしての運動はここまでで、これ以上の主張については最早やりすぎである」といった人もいるようですが、この論点についても議論は続いています。現代は第三波の時代ではありますが、その渦中にいるなかそれを整理することは難しいでしょう。

次回からはジェンダー論にフォーカス

連載の最初の2回で、物凄くざっくりとフェミニズムの歴史について見てきました。次回からは教育、労働、家族、国家など様々なレイヤーでトピックごとにジェンダー論を見ていきたいと考えています。

どれも私達の日常の生活の中にありながら、しかしだからこそジェンダー論の検討すべき対象になっているものばかりです。どうぞお楽しみに。

連載「生きづらさとジェンダー論を考える」
vol.1フェミニズムの歴史を概観する:第一波フェミニズムとはなんだったのか
vol.2フェミニズムの歴史を概観する:第二波フェミニズムとはなんだったのか
vol.3ジェンダーを巡る:近代家族という発明品と伝統の構築
vol.4ロマンティックラブ・イデオロギーと母性神話:恋愛、結婚、子育てを巡る現代の価値観
vol.5結婚への圧力が消えた社会の未婚化→少子化とジェンダー
vol.6女性の専業主婦願望の難しさ、男性が共働きを求める理由
vol.7「LGBTは気持ち悪い」記事から見える【元】マジョリティが認めたくない現実
vol.8パートタイムと非正規雇用:女性の労働問題からすべての人の労働問題へ
vol.9海外で上映が一部禁止!? 男性の権利についての映画『The Red Pill』、日本上映の立役者にインタビュー
vol.10女性の労働、ガラスの天井と能力主義の嘘
vol.11フェミニストが男性の権利を直視するドキュメンタリー映画「The Red Pill」を見て

 

参考図書

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