アメリカと同じ分断が生じる日本には、社会問題のwikipediaが必要だ

怖いのは対立ではなく、自分の持っている価値観や意見以外がこの社会にあることに無自覚であったり鈍感であることだ。自分の意見を固める情報を集めることは簡単だが反対意見を理解することは難しい。論点、主張、データと生の声を整理したい。

はじめに:アメリカと同じ分断が日本にも起きている

SNSで政治的な論争に触れたのは割と最近のことだ。それまでは基本的に顕名で、直接のディベートやディスカッションに関わることがほとんとだった。しかしちょっとしたきっかけでSNS上の政治的論争について触れる機会があって驚いた。

そこでは、普段僕が関わるような場では絶対に飛び出してこないような夥しい罵詈雑言、卑劣な物言い、軽蔑しあって攻撃しあって、互いを尊重したり丁寧に対話をしようとする人たちが非常に少なかった。自分と感覚が近い人間も、その主張が極めて攻撃的な色彩を持っていて驚いた。

と同時に、自分がいかにポリティカルコレクトと呼ばれる文化に属していたのかを改めて思い知った。世の中には本当に「女性に教育は要らない」とか「LGBTは本当に気持ち悪い」と思っていて口に出す人たちがいるのだ。

性別を問わず教育は価値のあるものだし、LGBTは身長や髪の色と同じ個人の属性の1つに過ぎない。そう思う自分の価値観は自明でもなければ前提でもない。そう捉え直すと、この社会の見え方は大きく変わった。これまで論点でないことが論点になり、見えなかった対立が幾つも明らかになった(例えば女性の社会進出)。

これはまさに、アメリカでトランプ大統領がヒラリー候補に勝利したときの雰囲気に近いなと思った。アカデミアや政治的な場では「公言」しないけれども、そういう多様性や人権といった概念が好きじゃない人たちは山ほどいるのだ。それを見ないで行う議論には意味がないと感じた。

怖いのは対立ではなく、自分の持っている価値観や意見以外がこの社会にあることに無自覚であったり鈍感であることだと思う。それから、twitterを通して積極的に異なる意見を持った人たちをフォローすることにした。中国や韓国を物凄く毛嫌いする人、伝統を伝統であるという理由で保持する人、女性専用車両は差別であって許されないという人etc。

社会問題のwikipediaが欲しい

そして驚いたのは、そこで繰り広げられる議論は本当に何度も何度も何度も繰り返されているということだ。主張Xに対しては主張X’が、その主張X’にはX”が反論として提出されている。でも、その主張の展開がどこかにまとまっているものは見つけられなかった。

また、関連する様々な言葉の定義や説明も見つけることは難しかった。使っている人たちにとっては自明の言葉も、そうでない人間にはわかりづらい。最初はジャップオス、ミサンドリーといった言葉もわからず調べることになった。中には侮蔑的なものもたくさんあったし、思想を理解するために重要なものも多かった。

更に参照されるデータもたくさんあった。論文であったり統計調査であったり、移民問題や教育と女性の社会進出と出生率の関係など、相反する主張が行われることも多々あった。読んでおくべき基本書のようなものも存在した。しかしそれらは問題、論点、主張、思想的基盤ごとに細かく分割されて説明され、総合的に理解することが出来ない。

要するに、自分の意見を固める情報を集めることは簡単だが相手の意見を理解することは難しいということがわかった。

日本や世界には移民、ジェンダー、教育、働き方など様々な社会課題が存在している。そこに起きている現象を知り、それを捉えるフィルターを知り、そこで初めて「課題」化され、課題に対する主張(意見)と根拠や価値観、当事者の声、それを補強するデータが意味を持つ。これらをまとめたものが欲しいと思った。

社会問題のwikipediaがあれば良いのではないか。それがオピニオンメディア「四角い世界を丸くする」を動かし始めた直接的な理由だった。

社会問題のwikipediaがあると便利である

もし社会問題のwikipediaがあったら嬉しいことはたくさんある。まず、何か社会課題に疑問を抱いた時にそこを見に行けばどういう主張があって、対立があって、その理由や前提となっている価値観は何かを知ることが出来る。自分なりの主張を構成することも出来るし、対立意見の根拠も同時に理解出来るので安易に相手を否定しなくて済む。

自分の周りの、自分と近い考え方を持った人間のアイディアばかり無意識に収集していると、知らない間に意見が偏ってしまう。世界が狭く見えてしまう。でも自分と全然違う人間もいること、どの思想にもそれなりの根拠とロジックと個人的な経験に基づく価値観が影響していることを知るはずだ。

また、うまく自分の思いやもやもやを言葉にできない人間にとっても有効だろう。僕自身、これまでtwitterをしている中で「自分がずっと思っていたことが初めて言葉にされたのを見た」と言って頂くこともあった。そういう情報は山ほどネットには眠っているはずなので、きちんとアーカイブにして後で見られるものにしたい。

繰り返される論争に対して、一言で「これが私の考えていることです」と示せるようになるのも意味があるかもしれない。でも相手がそれを読んでくれるとは限らないので実効性があるかはよくわからない。

社会問題のwikipediaには何が必要か

コンテンツレベル

では、そのようなwikipediaを作るとしたら具体的にはどんなコンテンツが必要だろうか。以下の3つになるだろうと考えている。1は特定の課題を深く理解し掘り下げていくもの。2はそれらの課題を横串で捉えて関係性、類似性を構造的に読み取るもの。そして3はそれらを行った上での自分なりの結論を書くものだ(後述するが最初は僕自身が熱心に行い、その後オープン化出来たら良いと思う)。

1.分析、整理、解決策のコンテンツ
-テーマごとの問題、論点
-論点を生み出す切り口(賛成、反対を含む)
-関連するデータ、論文、書籍
-個人的な経験(インタビューを行いたい)
-問題ごとの解決策、具体的なアクション
-団体や活動があれば紹介、適宜インタビュー

2.個別ではなく関連を重視したコンテンツ
-日本の持つ課題、論点を整理した目次的なもの
-様々な課題に共通する構成や状況について
-テーマや問題を横断した捉え方について
(つまり様々なイデオロギーに関する知識、歴史)

3.自分のオピニオンを表明するコンテンツ

1の例:大学無償化の多くの論点をまとめた記事
2の例;ミサンドリーとフェミニズムの違いを示した記事
3の例:企業はもっと高卒を雇え、の記事

機能レベル

また、このようなコンテンツをただひたすら量産しても見にくくなるだろうし、僕が見た世界だけを整理するのにも限界があるだろう。そこで、最終的には以下のような機能を持ったサービスにすることが望ましい。

1.僕以外にも編集作業が出来るシステムを構築する
2.ウィキペディアのように自由にコメントや項目の追加が出来るようにする
3.ただし承認やページの分割が可能な(ある程度複雑な)仕組みにする

編集ルールが異なるwikipediaみたいなもの、が結局作りたいものなのかもしれない。これを作ってみたい、手伝っても良いというエンジニアやwebデザイナーの方を大募集しています。是非ご連絡頂けたら幸いです。

社会問題のwikipediaを作るための具体的な手順

今後、この四角い世界を丸くするというメディアを社会問題のwikipediaに近づけていくために以下のプロセスを辿っていくつもりです。機能面を高めるのにはリソースが必要なので、まずはブログという形式でコンテンツを増やしていきます。

a.明らかに重要なテーマをある程度網羅的に整理する
b.多くの人が関心を持ち、かつ取り組みやすいものを選び、
c.特定の2-3のテーマを深掘りして具体的な課題を分析し、
d.必要であれば様々な人の意見、データ、論文や書籍を募り、
e.個人的な体験を持った人にインタビューをする
f.情報がまとまったところで解決策を提示し、
g.実際に行っている団体や活動があれば紹介し、
h.必要ならインタビューを行って情報を深める

という形です。これは先程のコンテンツで言うと1.分析、整理、解決策のコンテンツを作るためのプロセスになります。これとは別に、2.個別ではなく関連を重視したコンテンツを作るためにi.社会課題を整理している書籍の内容をサマライズしたり、j.ツイキャスで「あなたのTLで良くバズっている社会課題は何か」を直接聞いて整理していくつもりです。

直近ではまずa,b,i,jの部分「そもそも日本で認知されている課題とは何か」に取り掛かりたいと考えています。お勧めの本があれば是非ご紹介ください。また4月中に1-2度ツイキャスを行い、これについて話す予定でいます。

オープンな対話が出来る社会へ

罵ったり馬鹿にし合うことなく、もっとお互いの意見を共有することが出来ないか。最終的な結論は違っていても、違っている理由や相手のバックグラウンドを理解しようとし続けることは出来ないか。そんなことを考えています。

いま、SNSなどでは自分の好みの情報にだけアクセスすることはとても簡単です。近い意見を持った人を大量にフォローすればまるでそれが正しいことかのように考えてしまいます。冒頭の僕がまさにそれです。フィルターバブルと言ったりするこの現象は、社会の分断に一役買うことでしょう。

また、SNSではたくさんの議論が行われていて、そこには沢山の示唆があるのにフローとして流れてしまいストックとして後から参照出来なくなっていることは非常に勿体無いと思います。

これらの現状に風穴を開けられるようなプロダクトとして、社会問題のwikipediaに近いものを作っていきたいと思います。僕自身のオピニオンは当然ありますが、それもコンテンツの一部に過ぎない、そういう立場で物事を整理していきたいと思います。

P.S.

こういう社会課題を出来るだけ客観的に整理したり、過激なオピニオンもまた1つの意見として過剰に攻撃したり防衛しないで処理出来るようなメディアを作りたい人を募っています。特にエンジニア、デザイナー、編集者やライターとして協力したいという方は是非ご連絡ください。

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